M・清子
表紙・弘法さんと私へ→ (画像をクリックすると大きくなります) 2006.1.7追加
女性の身の回りを飾った品々―帯留 櫛かんざし
明治に入って生まれたと言われる帯留。幕末から昭和初期に女性の髪を飾った、櫛 かんざし。 刀装具や印籠などに、卓越した技を残した職人たちが、禁刀令が出された明治以降は、その技を、櫛かんざしや帯留作りにも生かしたと言われている。 小さな世界に繰り広げられる職人の技です。 帯留は、その調和を考えて帯締を必ずセットした。(明治~昭和初期の帯留の帯締を通す部分は幅が細く、厚みも薄く、当時の帯締でないと通らない。) |
竜田川(彫金)
幾種もの金属を駆使した見事な入念作(作者が一番力を入れた作)。際端銘 貞寿(幕末から明治の水戸一派の金工師) 8×4.3
"奈良県生駒郡の大和川の支流、もみじと桜の名所を流れる美しい川の流れから、もみじと桜、又、それに水の流れを配したものを、意匠(作風)として、竜田川と言う"
牡丹(彫金)
大輪の牡丹が鮮やかに美しくその表現は優しさに溢れている。小さな蕾を一つそっと配し、周りを囲む葉は色を変える事でアクセントをつけている。花と同色の葉には、極小の露を散らしている。
6.7×3
小菊と小禽(彫金)
光琳菊と蕾、そして極小な鳥が二羽遊んでいる。葉の露がいい。重層的に彫り上げられており、透かし彫りが全体に施されて非常に美しい。 5×2.2
”光琳菊について=まんじゅ菊(万壽ーの文字が使われる)とも言われるが、私は光琳菊と言う命名を好む。”
富士(彫金)
富士は日本一の山―富士の峰に三保の松原、帆掛け舟。金と銀の使い方が大変洗練されている。 富士の山肌の鉄味が絶妙。 とても気に入っている。4.3×1.6 ”肥後金工録の中に林家一子相伝の、鉄錆び付けの秘伝書がありそれには「おぼへ」として一、ねずみのくそ一、がにみそ一、あい(鮎)のうるかなどとある。職人の秘伝なのだ。”
蟷螂(彫金)
”蟷螂の斧を以て降車の轍を禦がんと欲す”と言う中国の故事による意匠。かまきりの表情がとてもユーモラスで可愛い。
中国には草虫図の伝統が古くからあり、蜂やかまきりは吉祥のモチーフとして多く描かれた。3×1.5
菊(彫金)
明治末期から昭和初期の帯留に見られる緋銅(赤色の銅―紅素銅)で優しい菊一輪を表現している。花蕊の細工が美しい。際端銘 弘貞
3.7×3.5
刀装具では素銅(すどう)―赤色の銅-と呼ばれる色だが、女性用の帯留ではやや華やかな色が工夫されている様に思う。
2006.1
菊二輪 (金工)
菊二輪の堂々とした意匠。花芯は細やか。
銘は読み取れない。
7.5×3.5
2007.4.24
花御所車(象牙)
何とも美しい帯留。御所車を囲む、菊、桜、牡丹、藤、それぞれ息を呑む出来栄え。厚みは2.8透かし彫りも使って重層的に彫りあげている。象牙彫りの美しさを余すところなく発揮している、染めも少し施されている。 早朝の市で、古い着物の中から転がるように私の手許に舞い込んできた。 7.7×5.5
二本の矢(オパール、真珠)
ブラックオパールの濃いみどり色が美しい、とても粋な感性。この意匠の持つ意味をあれこれ考えると楽しくなる。 宝石と呼ばれる物は好きではないのに、何故か、オパールと真珠の組み合わせには魅かれる物がある。意匠の美しさに思わず入手してしまった。 6×1
水辺(珊瑚)
観世水に蛇籠、二羽の鴛鴦、柔らかな水辺の草、一幅の絵を見るような、非常に日本的な美しい情景描写。鴛鴦の首の描き方が良い。ため息が零れる。 4.7×2.3
”観世水ー渦を巻いて流れる水を文様化したもの。地模様や組み合わせ模様として使われる。”
薔薇(珊瑚)
非常に大振りの珊瑚に洋風の小さな薔薇二輪。生駒時計店のホームページのコレクションに全く同種で薔薇一輪のものがあったが2006. 1そのコレクションの中から珊瑚がすべて消えた。6×2.7
2006.2.4
鈴蘭(珊瑚)
珊瑚の原木の形状を巧みに生かして見事な鈴蘭が美しい曲線で彫りだされている。その大きさが何とも華麗。蘭 チューリップ 三色すみれ ダリアなどの洋花が着物や帯に明治末から大正にかけて登場してくる。この帯留もそんな時代の物だろう。9×3.1 2006.2.4
波頭(珊瑚)
砕け散る波頭を流れるような美しい曲線で力強く見事に描ききっている。非常にうまい彫り。厚さ1.2を透かし彫りに見事に生かしている。この作に代表される日本の伝統工芸に生きづく曲線に魅せられる 7×2.4
”象牙色の珊瑚(淡黄白色)希少性高く、評価が高い”
水辺(珊瑚)
美しく細かな水紋に二層の蛇籠、散りばめられた小さなもみじの葉の上を、二羽の鳥がゆったりと羽根を広げて飛んでいる。白珊瑚に僅かに紅色が浮かんでいる。厚さ1.8
透かし彫りを少しだけ使って効果的に美しさを強調している。伝統的な日本の意匠がとても気に入っている。
6.5×3.2
三保の松原 富士(珊瑚)
三保の松原にたなびく雲の絶え間より富士の頂を望む意匠が美しい。富士の裾 松の表面の波打つような細かな柔らかな彫りが施されている。見落としてしまいそうな目立たない所への表現力には脱帽である。 6.2×2.2
帯留の台の細工
帯留の裏の素材は、金、銀、サンプラチナ(ニッケル 85% クローム11% 銀3% その他1%の合金 錆びにくく粘りがあるのが特徴 大正~昭和初期眼鏡の枠等に使われた。)、鍍金等。金工細工の匠の技が光る。裏の細工も一つ一つ鑑賞に値する。
すずらん(鼈甲 蒔絵)
曲線を描く鼈甲に金銀色蒔絵。 夜光貝螺鈿を細かに散らした美しい品。大正ロマンか?細かいすずらんは銀で経年により黒く変色していた、爪楊枝の先に銀磨きを付けて二日かかって磨いた、見事に銀は甦った。 6×3.6
捻り梅(螺鈿)
扇面に捻り梅と水紋、周りに桜の花を配している。梅と桜でもおかしく無いところにその意匠力を見る。模様の部分すべてにとても細かな夜光貝の螺鈿が施されている。写真ではうまく写し取る事が難しい。 8.5×4
梅に鶯 簪 (彫金)
梅に鶯が鮮やか。金工師、後藤一乗の流れを引く力作。梅の花の彫り方がその特徴。
後藤一乗=(足利将軍家以来代々の時の権力者に仕えた装剣金工の家系の最後を飾ると言われた幕末の京金工師。)
長さ 23.5